いつもときめいてる人になりたいな。
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『若冲が来てくれました』に行って来ました。


『若冲が来てくれましたーープライスコレクション江戸絵画の美と生命』を観に、福島県立美術館へ行って来ました。この展覧会はアメリカ人の蒐集家ジョー・プライスさん、悦子さん夫妻が、東日本大震災の報に衝撃を受け、日本の優れた美術品を里帰りさせることで、東北の人々を慰め元気にしたいということから開催されたものです。

その主旨もさることながら、若冲コレクションの見事さが評判を呼んで、福島県立美術館は開館以来の入場者記録を更新しているそうです。私が行ったときにも、小学生から年配まで、たくさんの人々が押し掛けていました。

感心したのは展示品のタイトルの付け方です。小学生にも解るようにと、平易な現代語タイトルが付けられていました。たとえば『鳥獣花木図屏風』には『花も木も動物もみんな生きている』というタイトルが。『達磨遊女異装図』は『<だるま>さんと<ゆうじょ>が着物をとりかえっこ』といったふうに。

私も日本美術に関心を持ったころ、いささか抵抗感を感じたのが、この漢字ばっかりの作品名です。ふりがながなければどう読んでいいか解らないし、何を意味しているのかもピンと来ない。ところが馴れて来ると、読めるようになるのはいいのですが最初の抵抗感を忘れてしまうのです。

そこで、いっぱしの解ったようなつもりになる。スノビズムの世界です。これはよくありませんね。今回の展示ではそれが払拭されていたのが先ずよかった。それに美術には本来言葉がないわけですから、小学生だって素晴らしい作品にはやはり感動すると思うんですよ。

さて、今回私が福島まで行って観たかったのは、やはり『鳥獣花木図屏風』です。この奇想天外な絵の現物をぜひ観てみたかった。現物が日本にない以上、この先いつ観られるかも解らない。このチャンスを逃してなるものか、と思いました。(ところがいま知ったのですが、静岡県立美術館にこれとよく似た『樹花鳥獣図屏風』という作品があるんですね)

若冲ファンならよくご存知でしょう。『鳥獣花木図屏風』は、「枡目描き」という手法で描かれた作品です。この「枡目描き」が、どうして生まれたかに非常に関心がありました。
研究者の間では、これは西陣の下絵(正絵)の手法に習ったものという説が有力だと言うのですが、ネットで調べても「正絵」がどういうものかよく解りませんでした。

「枡目描き」を初めて見たとき、私は単純に、これは「モザイクタイル」を表現したものだと思ったのです。今回実物を観て、やっぱり私には「モザイクタイル」に見えました。

「枡目描き」は、舛の中に舛が描かれているのですが、その描き方が一様ではありません。四角い舛を何重にも描いたものもあれば、四つ描いたもの、丸を描いたものまである。キラ(雲母)を使ったものもあります。これはどうしてだろうと思ったわけです。

これはタイルの立体表現なのではないでしょうか? 屏風を拡げて中心に立ったとき、真ん前に見えるものと端っことではタイルのテカリが違います。そのテカリを多様な表現で描き分けたのではないでしょうか? それに右隻の白象は、いかにもお風呂場のタイルの目地がくすんだような感じに描かれています。

周囲のボーダー模様は、ペルシャ絨毯のパターンを模したものだということは解っています。だとすれば、若冲はモスク建築に見られるモザイクタイルもどこかで同時に見ていたのではないでしょうか? 当時まだ写真はありませんから、博覧会のようなものでタイル画を見たのかも知れません。動物もしかりです。

若冲は様々な描画技法に挑戦した人ですから、モザイクタイルを見て、俄然チャレンジ精神が湧いたとしても不思議ではありません。タイルで絵を描くという方法をもう一回ひねって、タイル画を絵にしてみようと思ったのではないでしょうか? それに当時の一般庶民がまだ見たこともない動物+ペルシャのタイル画というダブル趣向は、見せ物の仕掛けとして非常に魅力的だったことは想像に難くありません。

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